自然さを求めて|趣味の問題?|真空管アンプの世界
真空管の世界
真空管が多く利用されていたのは、トランジスタが実用化され普及する以前の時代、1960年代までは多く利用されました。
真空管は、電気信号を増幅したりする作用がありますが、トランジスタに比べるとサイズが大きく、振動で破損する可能性もあり、消費電力も大きいなどの欠点があります。
マンガ『鉄腕アトム』においても、最初はアトムは真空管で動いていることになっていますが、途中で中身がトランジスタに変わった、ということになっています。
この例で言えば、真空管からトランジスタに移行していた時代には、トランジスタは進歩の象徴としてさえ扱われていた、という面があります。
真空管は寿命が短く、いわば電球のような構造のため温まって安定動作するまでに時間がかかるということもあり、デメリットは数多くあったようです(世界初のロケットの技術的課題の1つにあったのも、振動で真空管が破損してしまうことにあった、と言われています)
真空管アンプ
当時の電化製品には真空管が使われていました。
当然ながら、ラジオなども真空管を使用していました。
その流れか、オーディオアンプについても、トランジスタが登場する以前は真空管が使用されていました。
なお、やはり真空管なので、真空管が温まるまでしばらく待たないと、本当の性能は発揮できなかったようです。
真空管だと何がいいのか?
これはおそらく仮説ですが、真空管の構造上、人間に不快に聞こえる歪みや倍音などが少ないので音がいい、とする説があります。
計測してみれば、現在のハイレゾオーディオの方が歪みは少ないはずですし、その他の数値も真空管に比べると上なのではないか?と思うのですが…
これは、人間の好みの問題と関わってくる問題なのかもしれません。
数字としてよかったとしても、人間の耳には心地よいとは感じられない(かもしれない)ということです。
真空管に対するなんらかの「音がいい」という先入観があるからかもしれませんし、本当に真空管だと音がよく聴こえるのかもしれませんが、本当のところはいまだに不明です。
シンプルであること
なお、真空管の回路図は、トランジスタや集積回路を使用している電子回路に比べるとシンプルである、という特徴があります。
複雑さを増すほどに、様々な要素が絡んでくるものです。
それを嫌う人がいる、というのもまた事実かもしれません。
ありのままであることを好む、という場合には、真空管以外の選択肢は無くなります。
複雑であるから保たれる一定さもあるかもしれないが?
それを言うのであれば、複雑な構造になっているからこそ、ある一定のレベルで音が聴こえるようになっている、ということもまた事実のような気がします。
小型・軽量化できたのも、消費電力を抑えられたのも、いつでもどこでも便利に音楽が聴けるようになったのも、すべてはトランジスタから集積回路に至る流れの中で起きたことです(真空管のままではポケットに入るデジタル機器は作れなかった)
なので、いまの時代に真空管を使うというのは、ただの趣味趣向の問題とさえ言えます。
真空管アンプは回帰現象の一つ?
これは仮説ですが、真空管アンプについても、便利になり過ぎた時代だからこその反動、という側面もあるような気がします。
真空管アンプに使われる真空管はオーディオ用の真空管であり、この分野の真空管の生産量は一時期よりも増加に転じている、と言われています。
人間の嗜好が変化したことにより、便利さだけを求める人とは他に、昔ながらのものを大切にしたい、という人が一定数現れている、ということの1つの現象として、真空管アンプも位置付けられるでしょう。
不便だったものが「味がある」と言われたりして再評価されるように、これもまた人間の捉え方の問題と言えます。