メディアの変遷|オーディオ機器は記録メディアの再生機械
オーディオ機器はメディアに左右される
オーディオに限りませんが、AV機器というのは、記録された特定のメディアを再生するための装置です。
一番望ましいのはおそらく、現場で生の状態の演奏を聴くことですが、それだと人数が限られますし、時間と場所も限られることになります。
録音、録画が可能になったことで、より多くの人が好きな時間に好きな場所で音楽や芸術に触れることができるようになりました。
オーディオ機器は、いわば記録メディア再生装置です。
オーディオ機器の品質は、記録メディアの再生精度の高さに関係しており、つまり、より元の状態に近い状態で記録された情報を再現できるかどうか、それを競っていることになります。
なので、そもそも生の状態よりは必ず劣っており、それを前提にいかに差をなくしていくかどうかが関心になります。
極端に言うと、本物に似ている情報を本物に近づけるための物、ということになります。
メディアとは何か?
メディア media とは、手段、方法、媒体、の意味です。
また、外部記録媒体そのものをメディアともいいます。
メディアというのは、つまり、何かを伝えるための媒介となる物であり、あるいは媒介するための物そのものを指す言葉です。
記録媒体の変化の歴史
記録する、という意味では、文字に対する石や紙がメディアだった時代が歴史的に長い期間存在しました。
それが、技術が発展したことで、電磁的手法で記録ができるようになりました。
電気を用いるようになったことで、電気信号に変換して情報を伝達することが可能になりました。
実際、電話が登場した時、電話は通話のためというより、室内楽の演奏を中継するための放送機器として使われてもいました。
あるいは、ラジオ放送が行われたことも、その流れの中にあります。
また、情報を記録する方法も考え出されました。
(音を記録するレコードの原型は、1877年にエジソンによって発明されています)
磁気信号による記録(磁気テープ)は19世紀末には発明されていたようですが、第二次世界大戦中には軍事用に利用されるようになり、戦後の1950年代にはコンピュータ用の記録媒体が登場します。
その後、磁気テープはさらに活用されるようになり、音楽用テープカセットは1962年にオランダのフィリップス社によって開発されています(そのほか、音楽用アナログ磁気テープ規格は普及しなかったものも含めていくつか存在する)
家庭用ビデオテープレコーダーについては、ベータ規格が1975年に、VHS規格が1976年に開発されています。
その後、記録メディアはデジタル化が進んでいき、記録媒体もテープから半導体になっていきます。
かつて存在した家庭用のデジタルテープ式記録メディアは現在では姿を消しつつあり、現在は半導体に記録する方式が主流です。
なお、アナログ式からデジタル式になったことで、記録媒体は大幅に小型化しました。
保存したもの、流れてくるもの
記録メディアは保存したものを再生するものです。
なので、記録メディアは保存された情報が刻まれたものになります。
一方、ラジオやテレビなど放送メディアのように流れていくるものを再生する、という方向もあります。
これは、流れてくる水を一時的にバケツのようなものに溜めておいて再生するようなイメージに近いかと思います。
記録する必要がない代わりに、終わったら消えていくことにもなります(録音・録画できる場合もあるが)
なお、オンデマンド放送は、欲しいリクエストを送るとそれが返ってくるということになるので、事実上、記録メディアは手元に必要なく、通信先(配信元)が一つの記録メディアのようなものです。
どこへ向かう?
いくら記録方式が変化したとしても、メディアは記録したものでしかなく、再生機器はメディアの情報を再現するものに変わりありません。
おそらく、この関係は変化しません。
今後、その再現度がよりいっそう高くなっていくことは予想されますが、それ以外の方向性というのはちょっと思いつきません。
違ったリアリティを作り出すという方向性もあるだろうし、そういうものが主流になっていく可能性もありますが、じゃあ、現実とは何だろう?ということになっていくわけです。
もしそんな状態が主流となった時には、現実のあり方は従来とはまた違ったものになっているかと思いますが…
趣味趣向の問題とはいえ、もしかすると生きていること・見聞きしたことすら現実と解離したものとして扱われるようになってしまうのでしょうか?ちょっと不思議なことが日常になっていくかも知れませんね。